東亞寫眞タイムズ

同窓会

数年前ですが、中学の同窓会に出席しました。と言っても隣のクラスの同窓会です。「まあ、知らん仲でないし、お前も来いよ」と声をかけてくれる友人がいて、飛び入り参加となりました。かつての少年少女たちも皆年齢を重ね、職業や境涯も様々です。

この同窓会に出席した理由は一つだけ。小学校からの幼馴染だったS子に会いたかったからです。会場となったホテルの広間を眺め、その姿を探しましたが、どうもよくわかりません。顔の特徴でわかった元学級委員の男に「S子はどこ?」と聞いたら、「あそこにいるよ」と手で示しました。その手の先に口開けて大笑いしている訪問着姿のおばさん。でっぷり肥えて貫禄十分。

私はそっと横に座り、「お久しぶり」と声をかけてみました。「あっらー!〇〇〇くん!」と、驚きの大声が。S子は地元旧家の三女で、頭がよく、ピアノが上手でした。顔だちは上品で切れ長の目が特徴の優しい女の子だったのですが、目の前にいる彼女はどう贔屓目に見ても海千山千の厚かましいおばさん。

 

私は彼女が大学に進学した年までつきあっていました。清い交際です。しかし、彼女の母親は貧しい家庭育ちの私とつきあうことに大反対。すっかり疲れた私のほうから交際をお断りした経緯がありまして、青春の蹉跌として心にずっと残っておりました。しかし、それはこの同窓会ですべて解決。あの時交際を続け、万が一結婚に至っていたら、私はずっとあの不愉快不躾な笑いとマシンガントークに悩まされたことでしょう。いつも囁くように話し、私のために「アーニーローリー」を弾いてくれたあの素敵な少女は幻だったのです。

 

それで、帰りに気の合った者同士でお茶をしたのですが、その中に高校までS子と一緒だった級友女子がいて、話してくれたこと、それはS子の実像です。私が知るS子はしとやかで賢い女の子でした。でも、実際は普通の女の子とひとつも変わらないし、旧家といっても、ただそれだけ。遠い昔は金持ちだったけど、戦後は没落。父親はサラリーマンだし、娘三人もみんな普通のサラリーマンと結婚。どうしてあんなに母親がタカビーなのか意味がわからないとのこと。おそらくはアメリカ帰りの祖父が建てた大きな家に住み、洋風の生活してたので上流気取りだったのでは?と。そう、私の勝手な思い込みに加え、S子の意識しない演技に悪く言えば騙されていたのです。後から聞いたのですが、S子はお開きの後で私を探していたそうです。しばらく経ったある日、S子のやってるピアノ教室から演奏会の招待状が届きました。金額は申しませんが、10%引きの優待券が・・・。

無言で破棄したのは言うまでもありません。

 

 

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